賃貸物件の残置物は廃棄処分できる? 法的なリスクや困ったときの対処法を解説
賃貸物件の残置物は、原則として無断で廃棄処分することはできません。明らかにごみと分かる廃棄物でないかぎり、法律上は入居者に所有権が帰属するからです。入居者が夜逃げしたなど、残置物の所有者と連絡がとれない場合は、法的な手続きが必要です。
賃貸物件の残置物を発見した場合、オーナー側は泣き寝入りをせざるを得ないのでしょうか。賃貸物件の残置物の法的な所有権や、残置物の処分に困ったときの対処法、残置物によるトラブルを防ぐためにすべきことを紹介します。
賃貸物件の残置物の所有権は誰にある?
入居者が退去した後で、賃貸物件に残された家具・調度品などのことを、残置物といいます。残置物の取り扱いについて悩んでいるオーナーもいるでしょう。
賃貸物件の残置物の所有権は、原則として入居者にあるため、オーナーが勝手に廃棄処分することはできません。
国土交通省の「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」によると、たとえ建物の明け渡し後であっても、“借主が残置した家具・調度品等の所有権は借主に属する”という見解が示されています。
もし貸主であるオーナーが、借主の同意を得ずに残置物を勝手に処分した場合、民事上(損害賠償責任)、刑事上(窃盗罪や器物損壊罪など)の責任が生じる可能性があります。
事前に覚書などがある場合は処分してもよい
入居者から事前に同意をもらっている場合は、建物の明け渡しが完了したあとに、残置物の処分を行っても問題はありません。一般的な賃貸借契約では、「残置した動産類が存する場合には、賃借人は当該動産類についての所有権を放棄し、賃貸人がこれを処分することに異議を述べない」という趣旨の覚書などを取り交わすことが多いようです。
ただし残置品の処置に関する定めがあっても、入居者が賃貸物件を長期間留守にしている間や、家賃の滞納などを理由に夜逃げした際に、無断で残置物を処分するのはやめておきましょう。
国土交通省の民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)には、建物の明け渡しが完了していないうちに無断で残置物を処分した場合、住居侵入罪などにあたる可能性や、民事上も不法行為に該当する可能性があることが記載されています(※)。
ごみなどの明らかな無価値物は廃棄してもよい
賃貸物件の残置物のうち、明らかにごみ同然の無価値物であると分かるものに関しては、不要品である故に入居者が捨てていったものと解釈することもできます。
ただし家具や調度品など、一見して無価値物であると判断できないものについては、入居者に無断で処分しないようにしましょう。後日入居者に「一度に持っていけないため置いていったが、あとで搬送するつもりだった」などといわれた場合、オーナー側の責任が問われかねないためです。
入居者が明確な意思表示を行っていないかぎり、残置物の所有権は入居者にあるものとして考える必要があります。
残置物の処分に困ったときの対処法
残置物の処分に困ったときの対処法は4つあります。
- 入居者(残置物の所有者)に連絡をとる
- 入居者の連帯保証人に連絡をとる
- 建物の明け渡し訴訟を提訴する
- 不動産賃貸の先取特権を行使する
それぞれの方法について解説します。
入居者(残置物の所有者)に連絡をとる
まずは入居者に連絡をとり、残置物を処分してもよいか確認しましょう。残置物の所有権を放棄するという明確な意思表示があれば、建物の明け渡し後にオーナー自身で残置物を片づけたり、不用品回収業者を呼んだりしてもかまいません。
不安な場合は、残置物の処置に関する合意書を取り交わすか、入居者との電話のやりとりなどを録音しておくとよいでしょう。
ただし退去後の連絡先の通知に関しては、賃貸借契約の範囲に含まれないという考え方が一般的です。敷金の精算や家賃の滞納など、残務整理のために必要な範囲の連絡先は教えることが望ましいとされていますが、借主(入居者)の義務とまではいえません。
残置物などのリスクに備えたい場合は、賃貸借契約の特約として、退去後の連絡先を教えることを盛り込んでおくという対策も考えられます。
入居者の連帯保証人に連絡をとる
入居者から退去後の連絡先を教えてもらえない場合など、連絡がとれないケースも考えられます。
入居者に連帯保証人がいる場合は連絡をし、残置物の取り扱いについて相談するとよいでしょう。入居者のかわりに残置物を処分してもらうことはできませんが、入居者本人に連絡し、処分についての意向を確認してもらうことは可能です。
また連帯保証人に対し、残置物の撤去にかかる費用も請求できる場合があります。連帯保証人は、入居者本人の債務に関する利息、違約金、損害賠償など、すべての債務に関して責任を負うとされているためです。
建物の明け渡し訴訟を提起する
入居者が夜逃げした場合など、賃貸借契約が残ったまま連絡がとれなくなった場合は、賃貸借契約を解除した上で、建物の明け渡しを提訴するとよいでしょう。
賃貸借契約を解除するには、民法541条における3つの要件を満たす必要があります。
- 相当の期間を定めた催告
- 借主がその期間内に賃料の支払をしないこと
- 解除の意思表示
一般的には、配達記録付きの内容証明郵便などで催告や意思表示を行い、契約を解除します。その後明け渡し訴訟を提起し、判決をもとに強制執行の申し立てを行うことで、残置物の撤去が認められるでしょう。
不動産賃貸の先取特権を行使する
民法における不動産賃貸の先取特権を行使するという選択肢もあります。不動産賃貸の先取特権とは、家賃の滞納といった債務が残存している場合に、債務者の動産を競売にかけて、その売却代金から債務を回収できる権利です。
先取特権の対象となるのは、建物の利用に関連して常置された物とされており、一般的には畳や建具、家具調度類のことを指します(※)。ただし入居者がある期間継続して居室内に存置したものであれば、先取特権の範囲に金銭や有価証券、宝石類などが含まれる場合もあります。
残置物によるトラブルを防ぐためにすべきこと
残置物によるトラブルを防ぐためには、事前に入居者との間で、残置物の所有権を放棄する覚書を取り交わしておくとよいでしょう。建物の明け渡しが完了すれば、オーナー自身で残置物を処分できます。
また入居者が高齢者の場合、死亡した際に残置物が発生することも考えられます。残置物を円滑に処理できるように、国土交通省および法務省が策定した残置物の処理等に関するモデル契約条項を利用し、賃貸借契約を締結するとよいでしょう。身寄りがない方でも、居住支援法人などを受任者として、残置物を処理してもらうことが可能です。
建物の明け渡し訴訟など、法的な手続きが必要になった場合、時間も手間もかかります。計画的に準備を進め、できるだけ早く次の入居者を受け入れられるようにすることが大切です。
残置物の処理に困った場合は、思い切って売却するという選択肢もあります。不動産会社によっては、残置物が残った賃貸物件・投資物件の買い取りも可能です。賃貸物件に関するトラブルがあまりにも多く頻発する場合は、物件の売却を検討するとよいでしょう。
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2023年2023年5月期_ブランドのイメージ調査(調査1~3)
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
調査期間:2023年3月14日~2023年5月31日
n数:129(※調査1)、124(※調査2)、136(※調査3)/調査方法:Webアンケート
調査対象者:https://jmro.co.jp/r01446/
備考:本調査は個人のブランドに対するイメージを元にアンケートを実施し集計しております。/本ブランドの利用有無は聴取しておりません。/効果効能等や優位性を保証するものではございません。/競合2位との差は5%以上。