家賃滞納者が夜逃げをしたら罪に問える? 夜逃げに気づいたときの対処法も解説
国土交通省によると、賃貸契約をめぐるトラブル相談のうち、4番目に多いのが「家賃(賃料・滞納など)に関する相談(15.9%)」でした。
深刻な事例では、入居者が夜逃げし、滞納した家賃を回収できなくなってしまうケースもあります。このような場合、入居者を罪に問うことはできるのでしょうか。
国土交通省が令和4年3月に取りまとめた、「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)」に基づいて解説します。
家賃滞納した入居者が夜逃げをした場合、民事事件として扱う
家賃滞納した入居者が夜逃げをした場合、刑事事件として罪に問うことはできません。入居者の債務不履行による問題のため、民事事件の扱いとなります。
民法では、家賃の支払いが遅れた場合、貸主(オーナー)は借主(入居者)に対し、損害賠償請求権を有します(民法415条前段)。たとえ家賃の滞納が不可抗力によるものであっても、入居者が損害賠償義務を免れることはできません(同法419条3項)。
そのため、滞納された家賃の金額に応じて、少額訴訟か通常訴訟のいずれかの方法により、紛争の解決を図ることになります。
滞納された家賃が60万円以下なら「少額訴訟」
少額訴訟とは、60万円以下金銭の支払いを求める場合に利用できる、特別な民事訴訟手続きのことです。原則1回の審理で済むため、通常訴訟よりも簡単で速い裁判の手続きです。
滞納された家賃が60万円以下の場合は、簡易裁判所で少額訴訟を起こすとよいでしょう。
滞納された家賃が60万円を超える場合は「通常訴訟」
滞納された家賃が60万円を超える場合は、地方裁判所か簡易裁判所のいずれかで通常訴訟(民事訴訟)を起こす必要があります。
裁判所法によると、140万円以下の金銭の支払いを求める民事事件は簡易裁判所、それ以外の一般的な民事事件は地方裁判所が第一審裁判所となります。滞納された家賃が140万円以下であれば、簡易裁判所で手続きを行うとよいでしょう。
なお、民法では、債権の消滅時効期間について定められています。家賃滞納の場合、家賃を請求できることを貸主が知った時点から5年、または家賃を請求できる時点から10年で、支払い請求権が消滅することを知っておきましょう。
家賃滞納した入居者が夜逃げしたときの3つの対処法
もし、家賃滞納者が夜逃げをしたことに気づいたら、以下の3つの方法で対処しましょう。
- 賃料支払いの督促と賃貸借契約の解除の通知をする
- 連帯保証人がいる場合は家賃の支払いを請求する
- 建物の明渡し訴訟と強制執行の手続きをする
賃料支払いの督促と賃貸借契約の解除の通知をする
夜逃げした入居者への対処の際は、賃貸借契約を法にかなう方法で解除した上で、建物の明渡し訴訟や、残置物撤去の強制執行を申し立てる必要があります。
賃料不払いという債務不履行を理由に契約を解除するには、民法541条で規定された3つの要件が必要です。
- 相当の期間を定めた催告
- 借主がその期間内に賃料の支払いをしないこと
- 解除の意思表示
まずは、借主(入居者)に対して賃貸借契約解除の意思を示すため、賃料支払いの督促と、期日までに支払わない場合は賃貸借契約を解除する旨の催告を行いましょう。入居者への通知には、配達記録付きの内容証明郵便を用いることが一般的です。
賃貸借契約書において、家賃滞納についての遅延損害金が規定されている場合は、未払いの家賃と合わせて請求できます。ただし、遅延損害金については、支払い滞納額の14.6%という上限が定められています(消費者契約法9条2号)。
なお、入居者から預かっている敷金があれば、敷金を債務(滞納している家賃)の弁済に充当することが可能です(民法622条の2第1項)。
連帯保証人がいる場合は家賃の支払いを請求する
入居者に連帯保証人がいる場合は、本人に弁済を求めるのではなく、連帯保証人に家賃の支払いを請求することもできます。
民法447条1項に定められているように、連帯保証人は、借主の債務に関する利息、違約金、損害賠償、そのほかのすべての債務に関して責任を負うためです。
連帯保証人に家賃を請求する場合も、トラブル防止の観点から、入居者に対して賃料支払いの督促を行うとよいでしょう。入居者が督促に応じないことを先にはっきりとさせておいたほうが、スムーズに話を進められます。
建物の明渡し訴訟と強制執行の手続きをする
賃貸借契約の解除を行ったら、裁判所に建物の明渡し訴訟(および未払賃料の請求)を提起しましょう。訴状の作成には、法律の知識やノウハウが必要です。不安な方は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
建物の明渡し訴訟を行うと、相手方に訴状や期日呼出状が送達される必要があります。夜逃げした入居者が行方不明になっている場合は、公示送達の申し立てにより、通知が相手方に届いたと見なすことが可能です。
建物の明渡し訴訟が認められたら、判決に基づいて強制執行の手続きをしましょう。この強制執行の申し立てによって、初めて入居者が残置した家具・調度品(残置物)の撤去を行えます。
家賃滞納した入居者が夜逃げした際にしてはいけない2つのこと
家賃滞納した入居者が夜逃げをした際に、オーナー側がしてはいけないことが2つあります。
- 鍵を無断で付け替える
- 荷物を無断で運び出す
鍵を無断で付け替える
してはいけないことのひとつは、家賃を滞納している入居者が戻ってこないように、無断で鍵を付け替える行為です。
賃貸借契約の継続中は、借主(入居者)に使用収益の権利があります。そのため、貸主(オーナー)が、借主に無断で鍵を付け替え、借主が部屋に出入りができないようにしてしまうのはNG行為です。
また家賃滞納などを理由に賃貸借契約を解除し、借主が使用する権利を失った後も、借主の占有権自体は残っているものと解釈されます。そのため、借主の占有権を排除しようとする行為は、自力救済(自らの実力による権利の実現・確保・回復などを図ること)にあたり、違法とされます。
裁判所における強制執行の手続きが終わり、建物の明け渡しが認められるまでの間は、勝手に鍵の付け替えなどを行わないようにしましょう。
荷物を無断で運び出す
もうひとつは、夜逃げした入居者の荷物を無断で運び出す行為です。
家賃を滞納していたとしても、借主(入居者)の荷物は、原則として借主の所有物と見なされます。そのため借主が残置した家具・調度品などを貸主(オーナー)が勝手に処分した場合、民事上の損害賠償責任や、刑事上の窃盗罪・器物損壊罪などに問われるおそれがあります。
賃貸借契約書に残置品の処置に関する定めがある場合も、基本的な考え方は変わりません。たとえ借主が物件内の動産の所有権を放棄する契約を結んでいても、残置物の搬出・処分のため、貸主が物件内に無断で立ち入る行為は、住居侵入罪にあたる可能性があります。
残置物の撤去は、裁判所における強制執行の手続き(建物明渡しの執行および動産執行)が完了してから行いましょう。
このように、家賃滞納した入居者が夜逃げした場合、オーナー側はさまざまな手続きに追われます。オーナー側が勝手に残置物の撤去などを行った場合、民事上・刑事上の責任を追及されるリスクもあります。
賃貸経営に関するトラブルにお悩みの場合は、最終的な選択肢として、物件の売却も検討するとよいでしょう。また今後の再発防止策として、保証会社と家賃債務保証委託契約を結び、家賃の保証債務を引き受けてもらうという方法もあります。
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2023年2023年5月期_ブランドのイメージ調査(調査1~3)
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
調査期間:2023年3月14日~2023年5月31日
n数:129(※調査1)、124(※調査2)、136(※調査3)/調査方法:Webアンケート
調査対象者:https://jmro.co.jp/r01446/
備考:本調査は個人のブランドに対するイメージを元にアンケートを実施し集計しております。/本ブランドの利用有無は聴取しておりません。/効果効能等や優位性を保証するものではございません。/競合2位との差は5%以上。