アパート老朽化による立ち退き、大家が知っておくべき入居者への対応策
アパートの老朽化は避けられない現実です。しかし、大家にとって最も頭を悩ませるのは、その先にある入居者との関係性ではないでしょうか。立ち退きを求める際、トラブルを避けつつ、人道的な対応を心がけるバランスは絶妙で難しいものです。
立ち退きで起こりがちなトラブルと、入居者へ立ち退きを依頼する方法と手順、立ち退き依頼時の注意点を詳しく解説します。
アパート老朽化による立ち退きで起こりがちなトラブル
アパートの老朽化で、「居住を継続するには危険が伴う」と判断された場合、大家は入居者に立ち退きを請求できます。
安全で快適な住環境を提供しなければならない大家と、入居者では立場の違いからトラブルが起こりやすくなります。どのようなトラブルがあるのか、見ていきましょう。
交渉しても立ち退きに応じてくれない人がいる
アパートからの退去をお願いしたところ、「すぐには無理」「引っ越し資金がない」など、理由をつけて断る入居者がいます。
理由に納得できるかどうかにかかわらず、退去してくれない人が1人でもいれば困ってしまいます。
また、どのようにして納得してもらうか、交渉が難しいケースもあるでしょう。
入居者と連絡が取れない
勤務状況や業種により、日中不在の入居者もいるはずです。あわせて、仕事中はスマートフォンを使用できない環境下で従事する入居者もいます。
立ち退き期限などを知らせたくても連絡がつかないケースも想定し、すべての入居者に説明するスケジュールを立てましょう。
勤務状況や資金面の課題を抱えており新居が契約できない
入居してから何とかやりくりできていたが、タイミングが悪く、失業中で新居が探せない・引っ越ししようにもできない状況にある入居者もいるかもしれません。
トラブルというには酷な状況ですが、このような場合スムーズな退去は難しいケースが多く、大家や管理会社が新居をあっせんするなどサポートし、退去してもらうケースもあります。
入居者へ立ち退きを依頼する方法・手順
アパートの老朽化を理由とした立ち退きを依頼する際の、流れについて解説します。
1.立ち退き料を決める
アパートの老朽化による立ち退きも、大家側の都合となるため、スムーズな退去をお願いする意味も含めて立ち退き料を支払うのが一般的です。
借地借家法の第二十八条には、以下のような定めがあります。
"建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。"
引用:借地借家法(平成三年法律第九十号)「第二十八条」
上記法令の「財産上の給付」が、立ち退き料にあたります。立ち退き料の金額は法令などで定められてはいません。
一般的な相場は40~80万円程度で、内訳は「引っ越し費用+新居の契約にかかる諸費用+新居との家賃差額分」で、「住み続けられれば不要であった資金を大家が負担する」といった意味合いで支払われています。
また、「家賃の3~6カ月分」を目安と考えられるケースもありますが、多い場合は「家賃の10カ月まで」の範囲で支払うケースもあります。
2.期間満了の1年~6カ月前までに書面と対面で説明
退去してほしい日の6カ月~1年前に、退去してほしい理由と退去日について、書面を作成し対面で説明しましょう。
借地借家法の第二十六条と二十七条にも、以下のような定めがあります。
第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
"第二十七条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する"
引用:借地借家法(平成三年法律第九十号)「第二十七条」「第二十八条」
立ち退き請求する場合、入居者には6カ月から1年の期間の猶予を持って、退去日を通告する必要があります。正当事由があり、かつ立ち退き請求の通知を出して6カ月経過すれば、賃貸借契約を終了できます。
3.納得してもらえない場合は立ち退き料の増額を検討
大家は、立ち退き料(=財産上の給付)をもって入居者に退去の交渉ができます。
借地借家法の第二十八条では、以下のように定められています。
"建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。"
引用:借地借家法(平成三年法律第九十号)「第二十八条」
立ち退き料に納得してもらえない状況下でも、立ち退き料の増額で了承される可能性があります。増額をした結果、退去してもらえたケースもあるので、常識の範囲内で増額し相談するのもよいでしょう。
立ち退き依頼時の注意点
立ち退き交渉について対策をしておかないと不当に退去を拒否されるなど、トラブルに発展するおそれがあります。
交渉時のポイントをまとめましたので、参考にしてください。
老朽化は正当事由として認められない場合もある
築50年を経た物件でも、老朽化による立ち退きが正当とは認められなかった事例もあります。
正当事由と認められるには以下がポイントです。
- 設備の故障で建て替え必須である
- 地震などで倒壊の危険性がある
- 雨漏りや漏水で衛生的に大きな問題がある
- 地盤倒壊の危険性がある
上記のように、「入居者の安全性を確保できない要因がある」ことを証明できれば、正当事由と認められます。
例えば、建築基準法で定められる基準(震度6未満)をクリアできていないと証明できる診断書を取得し、提示することも有効です。
交渉内容はしっかりと記録しておく
交渉が長引く、トラブルになるなどすると、最悪の場合は裁判に持ち込む必要が出てきます。
備えとして、立ち退き依頼をいつ、どのように行ったか、対面で会話した際の記録を残しておくようにしてください。
退去依頼は半年〜1年の猶予が必要であることとあわせ、半年が経過すれば効力を発揮すると定められています。
記録を残しておくことで、最悪のケースとなった場合に有効な対策となります。
1人で解決が困難なら専門家を頼る
入居者との交渉が思うように進まない、長期化しているといった場合、管理会社や不動産会社、弁護士などの専門家に相談することもおすすめです。
過去の豊富な経験から、有効な対策のアドバイスが受けられることもあるでしょう。その他、トラブルに発展してしまったときに、どのように話を進めていけばよいか、頼ることもできます。
アパート売却は入居者ゼロの立ち退き後がおすすめ
老朽化で建て替えるにも、大きな費用がかかります。また大家としては、建て替えるより売却するほうがメリットとなるケースもあるでしょう。
この場合、入居者がいる状況での売却はおすすめしません。
大きな理由として挙げられるのは、売却額が相場以下になりやすいことです。売却時に入居者がいると、細かく内覧できないため、その後の運営にかかる費用を細かく算定できません。
そのため、売却額を低く抑えられてしまうのです。
相場以上の価格で売却するためにも、入居者が退去してから売却するか、立ち退きの段階から不動産会社に相談しましょう。その際は、収益物件の売買実績が豊富な不動産会社に依頼することで、よりよい条件での売却が期待できます。
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2023年2023年5月期_ブランドのイメージ調査(調査1~3)
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
調査期間:2023年3月14日~2023年5月31日
n数:129(※調査1)、124(※調査2)、136(※調査3)/調査方法:Webアンケート
調査対象者:https://jmro.co.jp/r01446/
備考:本調査は個人のブランドに対するイメージを元にアンケートを実施し集計しております。/本ブランドの利用有無は聴取しておりません。/効果効能等や優位性を保証するものではございません。/競合2位との差は5%以上。