アパート相続の流れを解説!相続するデメリットや注意点も
アパートを相続するにあたっては、経営を継続するか否かを決める必要があります。アパートは借主が見つかれば安定して収入を得られますが、空室が増えたり多額の修繕費が発生したりと負の財産になる可能性もあります。
アパートを相続する流れや、相続するデメリットを解説します。
アパートを相続する流れ
相続が発生した場合、すべての財産について相続人間で分割する必要があります。
相続発生から分割後までの流れについて、気をつけるポイントや考えられるケースにもふれながら詳しくみていきましょう。
相続人が二人以上ならいったん共同で相続する
相続が発生したら、相続人が二人以上の場合、遺産は法律で定められた相続分の割合で相続人らが共有します。
その後に遺産分割協議が行われ、財産の管理・処分は相続人同士で定めなければなりません。
従来は遺産分割の時間制限がなかったため、分割されることなくそのままになるケースも少なくありませんでした。
しかし令和3年の民法改正で、相続開始から10年が経過すると一部の相続人だけが生前贈与などで受け取った利益や、相続財産への貢献度に応じて認められる相続分の増額分を要求できなくなりました。
10年以内に遺産分割が行われない場合は、法定相続分によって分割が行われます。
参照:法務局 相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ
遺産分割協議に入る
遺産分割協議に入る際には、相続したアパートを売却するか否かによって分割する方法が異なります。
下記のような各ケースについて、それぞれ分割する方法をみていきましょう。
- アパートを売却しないで分割するケース
- アパートを売却して分割するケース
- 売却するか否か決まっていないケース
アパートを売却しないで分割する方法
アパートを売却せずに分割する方法としては、現物分割・代償分割・共有分割があります。
現物分割とは、相続財産を形状や性質を変えずに現物のまま相続する分割方法です。
相続人のうち一人がアパートを相続し、ほかの相続人が預貯金などほかの遺産を相続します。複数の不動産がある場合に有効な方法です。
代償分割とは、相続人の一部が法定相続分を超える遺産を相続し、ほかの相続人へ金銭を与える分割方法です。相続人のうち一人がアパートを相続し、金銭を支払います。
アパートを売却せずに残したい場合や、共有名義を避けたい場合などに有効です。
共有分割とは、相続財産を法定相続分で共有して遺産分割する方法で、アパートの登記を相続人同士で共有名義にします。共有分割はほかの分割方法では解決できない場合などに用いられることがあります。
ただし、共有分割の場合、アパートの管理などで利害関係が生まれやすいです。
また、売却の際にすべての相続人の承認・署名が必要になるなど、相続人間のトラブルが発生しやすいため、避けられる傾向にあります。分割の方法としてはあまりおすすめしません。
アパートを売却して分割する方法
アパートを売却して分割する方法としては、換価分割があります。換価分割とは、相続財産を売却し換金したうえでその金銭を分配する方法です。
アパートを売却した代金を公平に受け取れる点や、金銭として手元に残るため相続税の心配がない点がメリットになります。
ただし売却できるまで時間がかかる可能性がある点や、不動産会社によって売却価格が異なる点に注意が必要です。
決まらない場合は遺産分割調停・審判を行う
相続人間の話し合いで上記の分割方法による解決ができない場合は、遺産分割調停・審判を行います。
遺産分割調停は裁判所が関与し、相続人間で遺産分割協議を行う方法です。
相続人の同意が必要な点は通常の遺産分割協議と変わりありませんが、裁判所が関与するため、法律上の取り扱いを踏まえたうえで各相続人の主張を吟味します。
遺産分割調停では、民法上認められる具体的相続分を基準に遺産分割を話し合いますが、相続人間の協議であるため、細かい部分は柔軟に解決できます。
具体的相続分とは、個別具体的な要素を加えた相続分です。相続人が生前に受けた多額の贈与などが個別具体的な要素にあたります。
遺産分割調停で合意が得られない場合は遺産分割審判へ進みます。裁判所により法律の規定に従って遺産分割の審判が行われるのが遺産分割審判です。
具体的相続分や相続人間の合意を得るのが難しいケースでも、民法により具体的相続分を算定し家事事件手続法により分割方法を定めます。
遺産分割審判の審判内容に不服がある場合は不服申立てを行い、高等裁判所にて抗告審が行われ、通常は抗告審の判断が最終判断として成立します。
今後の進路を考える
アパートを相続するにあたっては、まずアパート経営を継続するか否かを検討しなくてはなりません。
空室率やローン残債、建物の状態などによる収益の有無、修繕費の見通しなどから今後どのようにすれば良いのかを相続人間で話し合う必要があります。
たとえば、アパートが比較的築年数が浅く、常に満室の状態が続いていて安定した収益が得られるケースでは、アパート経営を続けて不動産収入を得るのがおすすめです。
反対に、築古のアパートで空室率も高く、今後建て替えも含めて多額に修繕費がかかるケースでは、赤字になる可能性が高いためアパート経営の継続は難しいといえます。
では、アパート経営を続ける場合と続けない場合でどのような選択肢があるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
経営を続ける場合の選択肢
アパート経営を続ける場合、建物の状態によって建て替える・改修する・改修せず家賃を下げるなどの選択肢があります。
特に築古のアパートは建て替えや、修繕が必要な部分の改修が必要です。建て替えや改修は多額の費用負担が懸念されます。
ただし、立地が良く老朽化による空室率の低下が見込まれる場合や、建て替え・改修により安定した家賃収入が得られると想定できる場合は検討の余地があるでしょう。
資金に余裕がない場合や、将来の建て替えや売却までのつなぎとして運用する場合は、改修せずに家賃を下げることで空室を抑える選択肢も有効です。
経営を続けない場合の選択肢
アパート経営を続けない場合の選択肢としては、ほかの土地活用・売却するなどの選択肢があります。
アパートとして土地を利用するよりもほかの用途に土地を利用したほうが有効的であるケースでは、アパートを解体してほかの用途に作り替えたり、第三者へ貸与したりする選択が可能です。
たとえば、アパートのある地域で駐車場ニーズが高い場合はコインパーキングにしたり、日当たりの良い土地であれば太陽光発電設備の設置で売電の収入を得たりなどが考えられます。
また、アパートが老朽化していればアパートを解体して更地にした後、土地を売却することもあります。
反対に、アパートの需要があれば解体せずに売却することも可能です。
このように、アパートの状態や相続人の意向などによってアパート経営を続けない場合でもさまざまな選択肢が考えられるでしょう。
所得税と相続税の申告
アパートを相続した際に発生する税金の申告としては、所得税と相続税それぞれの申告が必要になります。
所得税については、準確定申告を行います。準確定申告では、被相続人が生前に得たアパートの家賃収入に対する所得税について、代わりに申告し納めます。
準確定申告は相続の開始を知ってから4カ月以内に行わなくてはなりません。
次に、相続税については相続した遺産について基礎控除額を超える場合に申告が必要です。
相続人自身もしくは税理士に依頼して相続税を計算して申告し、納付します。
相続税の申告・納付は相続の開始を知った日の翌日から10カ月以内に行わなくてはなりません。
また、申告書は被相続人の死亡時における住所地を管轄する税務署長へ提出が必要です。
加えて、相続税は各相続人がそれぞれ支払う必要があるので納付期限までに全員が支払うようにしましょう。
相続登記をする
アパートを相続したら相続登記(名義変更)を行いましょう。相続登記は相続税の申告・納付の前でも問題ありません。
相続登記の際には登記申請書の作成が必要になります。登記申請書は法務局ホームページから様式をダウンロードして作成できます。
ただし、作成の注意事項として使用する紙質や製本方法など指定されている項目が複数あります。
また、相続登記する際には登記申請書のほか、下記の添付書類が必要です。
- 戸籍の証明書(被相続人の生まれてから亡くなるまでの経緯が分かる連続した戸籍の証明書、相続人全員の戸籍の証明書もしくは法定相続情報一覧図)
- 遺産分割協議書(遺産分割協議で相続した場合)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の住民票の写し
このように、相続登記は登記申請書の作成や必要書類の準備など多岐にわたり、かつ専門的な知識も必要になります。
個人でやる場合は自身の都合に合わせて進められるうえ、費用を抑えられます。しかし、書類をそろえるのに手間がかかる点や専門知識がなければ書類不備が起こりやすいなどのデメリットもあります。
司法書士に依頼して相続登記する場合はすべての手続きを委任できるので負担が少なく、スムーズに進められますが、費用負担が必要です。
自身で手続きするか司法書士に依頼するかについては相続登記にどのくらいの費用負担ができるのか、相続の状況から煩雑具合がどの程度になるのかを見極めて選択しましょう。
住人への周知
住人がいる場合は住民への周知が必要です。
アパートをそのまま継続して経営する場合や第三者へ売却しアパート経営を引き継ぐ場合は、オーナーが変わった旨の連絡をしましょう。
また、アパートの建て替え・改修が必要になった場合やアパートの解体が決まった場合は早期に住人へ転居の依頼をしなければなりません。
このように相続によって影響を受けるのは相続人だけでなく、住人にも大きな影響を与えるため、早めに周知を行うことでトラブルを回避しましょう。
アパートを相続するデメリットや注意点
アパートを相続することで家賃収入が得られたり、アパートや土地といった不動産資産を手に入れられたりとメリットもありますが、反対にデメリットも存在します。
ここでは、アパートを相続するデメリットや注意点について詳しくみていきましょう。
アパートが負の財産になる可能性もある
相続で取得したアパートは満室経営できれば安定して収入を得られますが、空室率が高かったりアパートの老朽化が激しく、修繕費だけでも多額の費用が発生したりと負の財産になる可能性もあります。
そもそもアパートを相続すると建物や土地の評価額に応じた相続税などの税金がかかります。
また、ローンを利用している場合はローン返済も引き継ぐことになるため、収入よりも費用が過大になると考えられるでしょう。
アパートを相続することで費用負担が大きいケースでは、相続放棄も視野に入れる必要があります。
築古だと家賃を下げることになる
相続によって得たアパートが築古である場合は、現状よりも家賃を下げることになるでしょう。
築古の場合、新築アパートと比較すると空室率が高くなりやすいため、家賃を下げることで入居しやすくします。
ただし、家賃を下げ過ぎてしまうと収入が減少するため、突如発生する修繕や将来必要な改修に対応できなくなるかもしれません。
家賃を下げる際は、周辺にある同時期に建築された同じ規模のアパートの家賃相場をある程度把握しておくと良いでしょう。
ローン残債があると相続開始時に当然分割
相続したアパートにローンの残債がある場合は、譲り受けた相続人だけでなく、相続人全員がローン残債を分割します。
ローン契約の際に、団信(団体信用生命保険)に加入していれば被保険者の死亡により支払われる保険金で完済できます。ただし、ローン残債は相続税の算定の際に債務分として差し引けません。
ローン残債が多い場合はアパートの売却や相続放棄も検討する余地があるでしょう。
アパートの相続税を払えない場合の対策
相続財産にアパートが含まれる場合、相続税を支払う必要があります。しかしほかの相続財産を含め相続税が多額になってしまった場合、手元に金銭がないと相続税が支払えない問題が発生します。
では、アパートの相続税が払えない場合は、どのような対策方法があるのでしょうか。詳しくみていきましょう。
分割払いにする
相続税はある条件をすべて満たした場合、相続税の延納で分割払いが可能です。分割払いができる条件とは下記の通りです。
- 相続税額が10万円を超えること
- 金銭で納付することが困難な理由があり、かつその納付を困難とする金額の範囲内であること
- 延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること
- 延納申請にかかる相続税の納期限または納付すべき日までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して、税務署長に提出すること
ただし、延納税額が100万円以下で、かつ延納期間が3年以下である場合は、担保の提供が不要です。
参照:国税庁 相続税の延納
物納で相続財産を納める
金銭で相続税を支払えず、かつ延納によっても金銭で納付することが困難である理由がある場合は、物納申請により相続税を納付できます。
物納による相続税の納付を行う条件として、下記のすべての要件を満たす必要があります。
- 延納によっても金銭で納付することが困難とする理由があり、その困難とする金額を限度としていること
- 物納申請財産は納付すべき相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち日本国内に所在する財産であること
- 物納に充てることができる財産は、物納に不適格な財産に該当しないものであること、及び物納劣後財産に該当する場合は、ほかに物納に充てるべき適当な財産がないこと
- 物納しようとする相続税の納期限または納付すべき日までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること
参照:国税庁 相続税の物納
アパートの相続税が払えないと延滞税がかかる
アパートの相続税を期限内に払えない場合、延滞税が発生します。延滞税率は下記の通りです。
- 納期限の翌日から2カ月を経過する日までに相続税を納付した場合は年2.4%(令和4年1月1日〜令和6年12月31日)
- 2カ月を経過した日以後は年8.7%(令和4年1月1日〜令和6年12月31日)
また、相続財産が分割されていないとしても、期限内に相続税の申告・納付を行わなければなりません。
その場合は、各相続人が民法に規定する相続分の割合に従って財産を取得したものとして相続税の計算を行い、申告・納付を行います。
参照:国税庁 延滞税について
売却する選択肢もある
アパートの相続税を支払う金銭が手元にない場合は、アパートを売却するという選択肢もあります。
アパートを売却することで相続税の納付に充足できるだけでなく、不動産から金銭になることで遺産の分割を容易にできるメリットもあります。
アパートを売却するには、どのような点に留意すべきか詳しくみていきましょう。
売却は不動産会社選びが重要
アパートを売却するうえで重要なのが、不動産会社の選択です。アパートの査定額は不動産会社の評価方法によって大きく差が出ます。
そのため、少しでも高額査定をしてくれる不動産会社を選ぶことをおすすめします。
少しでも高額で売却できれば高額な相続税の納付も売却で得た金銭で納付でき、かつ手元に残る金銭も多くなるでしょう。
おすすめの不動産会社の選び方
アパートの売却をする場合は、複数の不動産会社から査定してもらい査定価格を比較するのがおすすめです。
同様の物件でも査定するポイントが不動産会社によって異なるため、査定価格にも差が出てきます。
また、分かりやすく丁寧に査定価格の根拠を説明してくれる不動産会社は安心して売却できるでしょう。
- 高値売却かつ早期売却したい方におすすめの不動産会社 No.1 ※
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- 相続の相談をお願いしたい不動産売却会社 No.1 ※
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相続や資産整理といった不動産に関するご相談も、実績豊富な当社にお気軽にお問い合わせください。高い専門知識を持ったスタッフが問題解決をお手伝いいたします。
2023年2023年5月期_ブランドのイメージ調査(調査1~3)
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
調査期間:2023年3月14日~2023年5月31日
n数:129(※調査1)、124(※調査2)、136(※調査3)/調査方法:Webアンケート
調査対象者:https://jmro.co.jp/r01446/
備考:本調査は個人のブランドに対するイメージを元にアンケートを実施し集計しております。/本ブランドの利用有無は聴取しておりません。/効果効能等や優位性を保証するものではございません。/競合2位との差は5%以上。