アパートの取り壊しは何年が目安?判断基準と流れを解説
国土交通省によれば、日本における取り壊される住宅の平均築後経過年数は約30年であり、イギリスの約77年やアメリカの約55年と比較すると短くなっています。
理由の一つにあるのが、生活水準の向上による住宅の更新です。設備の古い住宅は、生活様式の変化に伴い使われなくなるため、取り壊される傾向があるのです。
アパート経営においても同様のことが言えます。建物自体がまだ使える状態であっても、設備が古ければ入居者が見つかりにくいため、取り壊したほうがいい場合があります。
また、築年数の古いアパートは、見た目には問題がなくても老朽化が進行していることが多く、ある日突然高額な修繕費が発生するリスクがあります。そのため、たとえ収益が安定していたとしても、取り壊しを検討する必要があるのです。
ただし、取り壊しのタイミングは、建物の構造や立地、修繕やメンテナンスの頻度でも変わるため、何年目とは一概に言えません。
では、その見極めはどのようにすればよいのでしょうか。
アパートの耐用年数と取り壊しの目安
アパートを取り壊す目安には「物理的な寿命」と「経済的な寿命」があります。
物理的な寿命とは、建物が劣化して限界が到来する時です。アパートの基本的な性能は、雨風をしのげる居室で、地震が発生しても大きな損傷をせず、安全安心に暮らせる空間です。物理的な寿命を迎えたアパートは、基本的な性能を発揮するのが難しい状態と言えるため、取り壊しが必要になる場合があります。
どちらの目安も築年数が古くなるごとに兆候が見られますが、何年目かを断定することはできません。取り壊しのタイミングはアパートによって異なるため、2つの目安を参考にして決める必要があります。
一方、経済的な寿命とは、製品や設備が利益を生み出せなくなった状態を指します。経済的な寿命が過ぎると、維持や修理のコストが新規購入よりも高くなる、技術の進歩により陳腐化するといった傾向があります。そのため、アパートがまだ使える状態でも、経済的な寿命を迎えた場合は、取り壊されるケースがあります。
どちらの目安も築年数が古くなるごとに兆候が見られますが、何年目かを断定することはできません。取り壊しのタイミングはアパートによって異なるため、2つの目安を参考にして決める必要があります。
法定耐用年数は一つの目安
法定耐用年数とは、財務省の「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で定められている資産の使用可能な期間です。税制上、建物の減価償却費を割り出すために用いられている数字であり、住宅の場合は以下の表の通りです。
アパートの種類と耐用年数
項目 | 耐用年数 |
---|---|
木造の住宅 | 22年 |
木造モルタル造の住宅 | 20年 |
金属造(鉄骨厚が4mm超)の住宅 | 34年 |
鉄骨鉄筋コンクリート造の住宅 | 47年 |
木造のアパートは22年となっていますが、日本の住宅の平均寿命は約40年程度です。法定耐用年数は、税制や会計処理のために用いられる基準で、建物自体の寿命を定めているものではありません。そのため、「法定耐用年数=アパートの寿命」とは言えないのです。
築100年を超える古民家や歴史的木造建築物があるように、部材や施工方法、メンテナンス次第で寿命は大きく変化します。アパートの寿命は判断が難しく、「あと何年利用するのか。そのためにいくら修繕費や改修費用をいくらかけるか」と建物所有者の判断が最も重要です。
設備の修繕に高額な費用がかかるときは見極めが必要
アパートの性能を維持するには、定期的な修繕や改修が必要です。木造アパートの具体的な修繕箇所と修繕サイクルは以下のとおりです。
アパートの修繕・改修工事のサイクル
箇所 | 備考 | 修繕サイクル目安 |
---|---|---|
屋根 | 塗装、スレート葺き替えなど | 10~15年程度 |
外壁 | 塗装、外壁交換など | 10~15年程度 |
水回り | キッチン、トイレ、風呂の更新 | 10~15年程度 |
内装 | 壁紙などの内装材 | 10~20年 |
フローリング | 15~20年 | |
畳の裏返しおよび表替え、交換など | 10~15年 |
アパートは築年数が10年を経過すると、修繕費用や改修費用が徐々に発生してきます。築年数が15年~20年になると、屋根や外壁、水廻りなど大きな改修工事が必要になってきます。
築年数が古いアパートは大掛かりな工事だけでなく、設備の故障などの突発的な工事や修繕が増える傾向にあります。修繕・改修工事のタイミングを極力コントロールできるよう、定期的な点検やメンテナンスを実施することが必要になります。
築年数が一定以上経過したアパートの修繕や改修工事の実施判断は、「アパート経営としての事業収支」および「貸主責任」の観点から検討します。
アパートを投資や経営として行っている場合、修繕や改修工事などの追加投資は、その費用対効果に着目します。工事を実施することで賃借人を見つけやすくなるか、賃料の向上に繋がるかなどを分析します。入居者の目処が立たないのに改修工事を実施しても、投資資金が無駄になります。
アパートの取り壊しの目安は、修繕の費用に対して収益が見込まれるかどうかで判断します。修繕や改修にかかる費用が賃料収入や将来的な資産価値の向上に見合わない場合、取り壊しを検討したほうがいい場合もあります。
アパートを取り壊すときの流れ
アパートの取り壊しは以下の手順で進めていきます。
- 立ち退き要求
- 現地調査
- 費用の確定
- 室内の片付け
- 解体工事
アパートの取り壊しはスムーズにいかないことも多く、特に入居者がいると長い期間がかかったり高額な費用が発生する場合があります。そのため、慎重に進めることが大切です。
入居者への立ち退きには時間と費用がかかる
入居人がいるアパートを取り壊す場合、取り壊し前に立ち退き交渉をして退去してもらう必要があります。しかし、貸主と普通賃貸借契約(一般賃貸借契約)を締結している場合、日本の借地借家法で賃借人の権利は強く保護されています。「正当の事由」がない限り、貸主から一方的に解約できません。
貸主から申出ができる「正当の事由」としては、以下の要件です。
正当な事由 | |
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建物の使用を必要とする事情 |
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建物の賃貸借に関する従前の経過 |
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建物の利用現況 |
|
建物の現状 |
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財産上の給付 |
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正当な事由のポイントは「財産上の給付」にある立退料です。
立ち退き料とは、賃貸人が賃借人を退去させるために支払う費用です。賃借人は立退きにあうと、転居に伴う費用(引越し費用、転居先の礼金、賃料の差額、仲介手数料など)が発生します。
立ち退き料は、賃貸人(アパート所有者)の都合で賃借人に退去してもらうための損害補償ともいえます。立ち退き料は、賃借人と賃貸人の合意で支払うもので、義務があるものではありません。
また、立退交渉は非常に難易度が高く、簡単に合意できるものではありません。賃借人は、立退き要求を拒否する権利を持っています。立退料を支払うとしても必ず同意できるものではありません。場合によってはトラブルに発展するケースもあるため、弁護士や専門家に相談することをお勧めします。賃借人に対しては、余裕を持ったスケジュールで交渉着手できるよう、解体工事の1年間程度前から丁寧に説明することが重要です。貸主が借主の部屋に勝手に入って荷物を搬出するのは違法行為に該当するためできません。
なお、契約期間を事前に定めた定期借家契約の場合、契約期間が過ぎれば解約となります。
アパートの取り壊しには「高額な費用」がかかる
アパートの解体費用は、建物構造、規模や立地条件により異なります。工事単価の目安は以下の通りです。
解体費の目安(坪単価) | |
---|---|
木造 | 3~5万円/坪 |
鉄骨造 | 5~7万円/坪 |
鉄筋コンクリート造 | 7~10万円/坪 |
上記金額はあくまで目安であり、実際の費用は建物規模や周辺環境により異なります。また昨今の工事関係者の人手不足から解体工事費用も上昇しています。解体工事を検討する際には、解体工事業者から見積を取得しましょう。
築年数の古いアパートを取り壊す以外の方法
アパートの取り壊しには多額の費用がかかり、予算的に厳しい場合があります。しかし、アパートには、取り壊し以外にも様々な選択肢がありますので確認してみましょう。
募集条件を緩和して入居者を増やす
建物を取り壊さずに収益物件として継続利用する場合、募集条件を緩和することで入居者が見つかりやすくなる場合があります。
以下はその方法です。
- 築年数が古いアパートは、新築物件と比べて家賃を低めに設定する
- 敷金・礼金なしや、ペット可、楽器可などの条件を緩和し、入居者層を広げる
- 入居者に部屋の改装やカスタマイズを認める
ただし、アパート運営には賃貸人としての義務を履行しなければなりません。民法606条では賃貸人の義務として、「賃借人が使用・収益するために必要な修繕を行う義務」が定められています。アパートの入居人が生活に支障をきたすような損害が発生した場合、損傷箇所を修繕する義務は、賃貸人(アパートの所有者)が負っています。そのため、築年数の古いアパートを継続利用する場合、高額な修繕費がかかることもあるので注意が必要です。
専門性の高い不動産会社に売却をする
アパートの取り壊しには、入居者との立ち退き交渉や立ち退き料の支払い、取り壊し費用の発生など手間や費用が発生します。アパートの取り壊しは、大きな負担となる場合もあるため、一度売却についても検討してみましょう。
実は、築古のアパートは売却するのは難しいと思いがちですが、アパートの売買に特化した不動産会社が存在します。アパートの売買に特化した会社であれば、築年数が古くても物件の強みを理解し、効果的な販売戦略を立てることができます。
アパートを売却すれば、当然賃借人に立ち退き要求をしなくてもよく、取り壊しのように費用をかけることもないので金銭的な負担が軽減されます。
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2023年2023年5月期_ブランドのイメージ調査(調査1~3)
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
調査期間:2023年3月14日~2023年5月31日
n数:129(※調査1)、124(※調査2)、136(※調査3)/調査方法:Webアンケート
調査対象者:https://jmro.co.jp/r01446/
備考:本調査は個人のブランドに対するイメージを元にアンケートを実施し集計しております。/本ブランドの利用有無は聴取しておりません。/効果効能等や優位性を保証するものではございません。/競合2位との差は5%以上。