古いアパートは相続放棄するべき?手続きの方法やほかの選択肢を紹介
いずれ相続する予定の古いアパートをどうすればいいのか。特に、いままで賃貸経営をしたことがない場合や、アパートが遠方にある場合は、できるなら相続をしたくないと考えるはずです。
相続放棄は、アパートを含めたすべての遺産を相続しない方法です。現金などの資産を放棄することにはなりますが、アパートなど負担に感じるものや負債を背負う必要がないため、有効な方法といえるでしょう。
しかし、管理義務が残る可能性があるなどのデメリットもあるため、ほかの選択肢も検討すべきです。
古いアパートは相続しても経営が難しい
安易に古いアパートの経営を引き継ぐのは避けるべきです。まずは築年数の長いアパートを経営するうえでのリスクについて理解しましょう。
維持コストの高さ
築年数が長くなるほど、屋根や外壁の修理など、機能や見た目を維持するために多額の修繕費がかかってきます。また、修繕だけでなくエアコンや水回り、給湯機器など設備の交換も必要になってくるでしょう。
国土交通省の「賃貸住宅の計画的な維持管理及び性能向上の推進について」によると、外壁や屋根の塗装や補修は10年〜15年、水回りの交換は約20年が目安です。そのため、いままでメンテナンスが不十分だった場合、一気に維持コストがかかる可能性もあります。
古いアパートの場合、一度経営を引き継いでから後々維持コストの高さに「やっぱり売却しよう」と思い直したときには資産価値がますます低下しているため、売却しにくくなってしまいます。
空室リスク
現時点でのアパートの入居率を見て「収益が出ているから経営を続けたほうがよい」と考える人もいるでしょう。しかし、今後さらに築年数が長くなるにつれて空室が増える可能性も考える必要があります。
賃貸物件情報検索サイト上で検索条件として築年数が細かく設定できることからもわかるように、「築年数の浅い物件に住みたい」「あまり古い物件には住みたくない」と考える人は少なくありません。
さらに、もしいまでも空室が目立つようなら、税金面でも損になります。
相続税の算出の基となる土地の評価額は、賃貸アパートが建っている場合「貸家建付地」という扱いになり、以下の式で算出されます。
つまり、空室率が高い(賃貸割合が低い)と評価額が上がってしまい相続税が高くなります。今後さらに空室が増える前に売却を考えたほうがよいかもしれません。
家賃の下落
建物が古くなり入居を希望する人が減れば、入居してもらうためには費用をかけてリフォームするか、家賃を下げるしかありません。
建物の修繕コストは上がるのに家賃は下げざるを得ないとなれば、当然収支も悪化してしまいます。
アパート経営は、順調なときは大きな利益を得られる可能性がある魅力的なものです。しかし、上述したような経営リスクのほかにも、空室をなくす工夫や滞納など問題のある入居者への対応など、思っているより大変なものです。
特に古いアパートの経営は難しく、「手間とお金だけかかって利益が出ない」という可能性もあります。
古いアパートの相続を放棄することも可能
アパート経営は大変そうだからしたくないと考えている場合、アパートを相続放棄するのもひとつの選択肢です。
相続放棄の方法やデメリットについて説明します。
相続放棄とは
相続において、相続人は強制的にすべてを相続する必要があるわけではありません。どのように相続するかは以下の3種類から選択できます
- 単純承認(原則)
- 被相続人(亡くなった人)のすべての財産(資産と負債)を承継
- 限定承認
- 被相続人の資産の範囲内で負債を承継(負債額が不明な場合など)
- 相続放棄
- 被相続人の財産(資産と負債)をすべて承継しない
相続放棄とは、手続きを行うことによって「そもそも相続人にはならない」とするものです。相続放棄は単独で行えるため、ほかの相続人がいたとしても同意は不要です。
相続放棄の方法と注意点
相続放棄をする場合には、以下の2つの条件が必要です。
- 相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申し出る
- 相続財産を処分していない
相続放棄の手続き自体は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に以下の書類を提出すれば完了します。
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本(相続人が子の場合)
- 相続放棄を行う人の戸籍謄本
- 相続放棄の申述書
参考:裁判所「相続の放棄の申述」
ただし、相続放棄の手続きをする前でも後でも、被相続人の財産を処分した場合は相続の意志があるとみなされ「法定単純承認」となり相続放棄ができなくなってしまいます。
アパート経営の場合、被相続人の財産であるアパートの賃料を入居者へ請求することも単純承認とみなされてしまうため注意が必要です。
相続放棄のデメリット
資産を放棄する代わりに負債も相続しなくてよいため、相続財産がマイナスあるいは少なかったり、処分しにくかったりする場合には相続放棄は有効な手段です。
しかし、相続放棄には一般的に以下のようなデメリットがあります。
説明 | |
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相続放棄をすると原則撤回できない | 後日プラスの資産が見つかったとしても諦めるしかない |
ほかの相続人とトラブルになる可能性がある | 相続順位が変わることでほかの相続人に負担がかかりトラブルになる可能性がある |
相続人に設けられている非課税枠が利用できない | 相続放棄をしても生命保険金や死亡退職金は受け取れるが、相続人が利用できる非課税枠(それぞれ500万円)が利用できなくなるため、受取人になっている場合には注意が必要 |
さらに、相続財産にアパートがある場合、相続を放棄しても管理義務や費用負担が残る可能性があります。
もし自分が相続放棄をして、ほかの相続人がアパートを相続してくれれば問題はありません。しかし、ほかに相続人がいない場合、入居者がいる以上「オーナーが死亡したため、今後アパートの管理はしません」というわけにはいきません。
そのような事態を避けて利害関係者を守るため、相続人が不在の財産については相続財産管理人を選任する必要があると法律で決まっています。少なくともほかの人が選任されるまでは相続放棄をしてもアパートの管理が必要なうえに、選任手続きに関する費用負担も必要です。
このように相続放棄にもデメリットがあり、よく検討してから決定する必要があります。相続放棄の決断をする前に、ほかの選択肢についても一度考えてみましょう。
古いアパートを相続放棄する以外の選択肢
前述したとおり、古いアパートを相続する可能性がある場合、そのまま経営を継続するにも相続放棄するにもそれぞれ問題があります。
それら以外の選択肢を紹介するので、検討してみましょう。
売却する
一番シンプルで問題が少ない可能性が高いのは、やはりアパートを売却することです。
売却して得た現金は相続税を支払う元手にもなりますし、現金化すれば相続人の間で分けやすく、円満に遺産分割が進みやすくなります。さらに古いアパートを経営する負担もなく、売却して得た現金でほかの資産運用もできるため、選択肢が広がります。
もし売却をするなら、なるべく早いほうが税金面で得になるため、おすすめです。
アパートを売却したとき、利益として発生する譲渡所得には税金が課せられます。譲渡所得の計算式は、以下のとおりです。
相続財産を3年以内に売却した場合に限り、この取得費に相続税の一部を算入できるため、その分譲渡所得が安くなり、節税になります。
また、毎年アパートなどの固定資産の所有者に課せられる固定資産税を支払う必要もありません。
売却にはアパートをそのまま売却する方法と、自分で更地にしてから売却する方法があります。費用はかかりますが、特に古いアパートの売却では更地のほうが売れる可能性が高いケースがあります。どちらがよいか一度不動産会社に相談してみるとよいでしょう。
贈与する
自分は古いアパートを相続したくなかったとしても、ほかに経営を引き継ぎたい人がいるかもしれません。
たとえば、地元から遠くに住んでおり、親が管理していたアパートが遠方にあるため、相続放棄を検討している人もいるでしょう。近くに住む親類なら、経営に前向きになる可能性もあります。
「自分がいらないから他人もいらないだろう」と決めつけず、相続放棄を考える前に一度心当たりのありそうな人がいれば声をかけてみるのもよいでしょう。
ただし、不動産評価額が110万円以上の場合は、贈与に伴い相手に贈与税が発生します。また、贈与をする相手への所有権移転手続きに手間と費用がかかるため、注意しましょう。
アパート以外で土地を活用する
古いアパートのまま経営を続けたくはないけれど、土地を処分するのはもったいないと考えている場合は、アパートを取り壊してほかの土地活用を行うのもひとつの手段です。
もし現状アパートの空室が多ければ、残っている入居者に立ち退き料を支払って退去してもらったほうが、相続放棄をするより得になる可能性もあります。
ただし、賃貸経営に慣れていない人が自分で立ち退き交渉を行うのはハードルが高いでしょう。交渉がうまくいかず入居者とトラブルに発展するリスクもあるため、注意が必要です。
まずはアパート売却が得意な不動産会社に相談しよう
古いアパートの相続を迷っているのならば、まずは売却の可能性を検討するのがよいでしょう。
売却相場やアパートの現状を把握するためにも、まずはプロである不動産会社にアドバイスを受けてみましょう。
ただし、不動産会社によって得意・不得意は異なります。賃貸や売買、戸建てやマンションなどにそれぞれ特化した会社もあるため、アパートに関してはアパート売却が得意な不動産会社に相談しましょう。
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2023年2023年5月期_ブランドのイメージ調査(調査1~3)
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
調査期間:2023年3月14日~2023年5月31日
n数:129(※調査1)、124(※調査2)、136(※調査3)/調査方法:Webアンケート
調査対象者:https://jmro.co.jp/r01446/
備考:本調査は個人のブランドに対するイメージを元にアンケートを実施し集計しております。/本ブランドの利用有無は聴取しておりません。/効果効能等や優位性を保証するものではございません。/競合2位との差は5%以上。